よく噛んでおいしく食べることが健康な生活の基本です。食卓を囲む家族団らん、さまざまな会食、食べることはまた、社会的なコミュニケーションの重要な手段です。
この食べる営みを支えているのが、健康な歯と口の機能なのです。
健やかに過ごす源はおいしく食べて元気な体を作り仲間と話したり、音楽を楽しんだり、歯と口の健康を保って、はつらつとした生活を保つことです。
孫とおやつを囲んでの語らい、親しい仲間との音楽会、余暇も老後の楽しみも歯と口の健康からですね。
よく噛むことによりあごの周辺の骨を作る細胞にはたくさんの栄養が取り込まれます。骨を作ろうとする作用が活発になるわけです。逆に噛むことをしないと、あごの骨と歯をつなぐ細胞の合成がされにくくなります。
つまり、よく噛む習慣を身につけると、歯とあごの骨は強く結びつき、ますます丈夫な歯になり、噛まないと歯はどんどん弱い歯になってしまうのです。
よく噛むと唾液がたくさん分泌されます。この唾液、驚くほどのすばらしい働きがあるのです。
食事をすると、歯の表面についた歯垢(プラーク)の中の虫歯菌が糖分などを利用して、酸を作ります。そして、これが一定の水準を越えるとエナメル質が溶け出します。これを「脱灰」といい虫歯の始まりです。
しかし、なんと唾液の働きによって、40分〜60分で歯の表面の酸性度は中性になるのです。それで、一度溶かされたエナメル質は再び歯の表面に形成されるわけです。これを「再石灰化」といいます。
このように、私たちの口の中では、「脱灰」と「再石灰化」を繰り返しています。
間食の多い方に実は虫歯が多いのは、脱灰している時間が長く、再石灰化の時間が短くなってしまうためです。
ですから、規則正しい食生活とよく噛むことにより十分に唾液を分泌できるようにしましょう。
「噛む」という動作は脳を伝わり、満腹中枢を刺激します。
ですから、よく噛んで食べると「おなかいっぱいになった」という感覚が生まれて、食べすぎを防いでくれます。実は臨床的にも応用されているんですよ。
また、唾液には、唾液腺から導管を通って分泌され、
口の中を潤すとその途中で血液に取り込まれて全身を回る唾液ホルモンがあります。
この唾液ホルモンの一つは体の皮膚の表層にある細胞の成長を促進させる働きがあります。この皮膚細胞ですが、実は私たちの体の外側だけでなく、内側も、そして、血管の内側だって、同じ系統の細胞なのです。
つまり、唾液ホルモンは体の内外を問わず体中の細胞を新しくする新陳代謝にとって重要な役割を担っているのです。
健康で丈夫な老後を迎えるために、まず考えたいのが食事です。
楽しく食事をし、食べる量は適量か考え、そして、栄養バランスがとれた「おいしい」と感じる食事をよく噛んで食べましょう。
「食べる機能」は実はすべて脳で統合されています。食物を目で見て、匂いをかいで、味を調べて、食べてもよいかどうかを判断します。だからこそ、老化に気づいたら、「食べる機能」、特に「噛むこと」を介して、脳に刺激を与えるのです。
食物の持つ固有の歯ごたえ、噛み応えを感じることにより、脳を活性化して、老化の防止、記憶力の強化につながります。
唾液には、発がん物質を抑制する成分が含まれていることもわかっています。
いわゆる発がん性物質として知られている食品添加物や活性酸素を消去する作用がある酵素があるのです。
この酵素に働いてもらい、食物に含まれる発がん物質を中和するには、食物をよく噛み砕き、しっかりと唾液と混ぜ合わせる必要があります。「よく噛んで食べるとがんの予防」になるわけです。
永久歯は全部で28本です。
今現在、80歳日本人の平均はわずか7本です。自分の歯で健康に食事をするのには最低20本の歯が必要だといわれています。
一生自分の歯で楽しい食生活と健康な日常生活を送るために、子供のころからの正しいデンタルケアと青年期のセルフケアがとても重要なのです。
35歳が曲がり角といわれ、30歳を過ぎて歯を失う原因の約9割が歯周病だと言われています。
生活習慣病といわれるこの病気は、日頃の仕事の忙しさに任せて、“暴飲暴食”や“不規則な生活”からの少しの痛みや歯のぐらつきなど、見過ごしがちな毎日のチェックがとても重要です。
食べたらすぐ磨く、また、ブラッシングは正しいやり方をしているか、ブラッシングと併用するとよいオーラルリンスなど、歯科医師に気軽に相談してみてください。
まずは、皆様のやる気が一番。
「一生自分の歯で楽しく過ごす!!」としっかり心に決めて、ぜひ、毎日のお手入れをしてみてください。
また、定期的に歯科医院にお越しいただき、歯を健康に保つための検診や、予防処置を継続的に受けられることをお薦めします。